10月28日、災害支援市民ネットワークしがの第3回研究会を開催しました。講師は日本弁護士連合会災害復旧支援委員会前委員長・兵庫県弁護士会の津久井進さんです。テーマは「法律家から見た被災者支援」で、後援は近畿労働金庫・滋賀県生活協同組合連合会でした。
津久井進さんの著書に『災害ケースマネジメント』があります。「災害ケースマネジメント」とは、被災者の個別の状況を把握しそれに合わせた支援策を組み合わせた計画をたてて支援するしくみのことです。
現在は世帯単位や地域への支援のしくみはあっても個人の支援のしくみは乏しく、困っている人に必要な支援はあっても、しくみが柔軟ではないので必要な人に手が届いていない現状があるそうです。例えば、被災証明書を持っていないと支援のお金がもらえない、かつ申請制なので知らないと網からもれる、また病気の人や心理的被害の人はもらえないなど、災害前から困難を抱えている人はまさに災害で動けなくなってしまうそうです。その人の生活に寄り添い支えるということは、介護保健のケアプランのように、細かく、最後の一人まで救わなければいけないとのことです。
というのも「避難所にいなかったので情報が入らなかった」という人も多くいたそうで、過去東北の法律相談にも行った時、誰も来なかったとのことです。そこで出向いて行き住民の皆さんに話を聞くと、「私はあそこより大丈夫」と言う人が多く、全員困っているのに「困ってない」と気持ちを維持しようとしているのがよくわかったそうです。それで質問を変えて、「ハンコがなくなって困っていませんか」「権利書とかはどうですか」と聞くと、多くの方が心配されていることがわかりました。そこで「今は本人確認さえできれば、勝手に土地を売ることはできないから大丈夫」と伝えると安心されたそうです。また家族単位の制度が多い中、家族にヒアリングをすると考え方やしてほしいことがみんな違うのがわかるとのこと。一人一人の話を聞き、支援策につながるしくみが重要だそうです。
幸せを追い求めることが福祉で、憲法は 13 条には「幸福追求権」が大事だと書いてあります。法律は怖いものではなく、この憲法を元にしているからこそ、その人にあった器
=支援を用意できるのとのことです。災害時どんな法律や制度が使えるか、研修にも使える「被災者支援カードゲーム」を紹介されました( HP 公開中、ダウンロード可能)。ほかにも役立つ制度として「災害リバースモーゲージ」なども紹介してくださいました。ま た、個人情報保護法は効果的な活用により個人を保護することが目的なので、個人情報は要援護者支援団体にも提供できるそうです。
最後は「被災者を自分たちだけにさせず、多くの人や組織がよってたかって連携し支援することが重要です」と締めくくられました。
災害支援市民ネットワークしがとしては「法律」という新しい視点での研究会。難しいかと心配しましたが逆にわかりやすく整理されてお り、一人一人を見て支援するという根本的なことは、どのような専門性から辿って行っても同じことなんだと感じました。
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