2021年度 災害支援市民ネットワークしがの第4回研究会を、2021年12月10日に開催しました。共催が近畿労働金庫、後援は滋賀県生活協同組合連合会・滋賀県労働者福祉協議会からのご協力をいただきの開催でした。
講師はNPO法人さくらネット代表理事の石井布紀子さんで、テーマは「新たな災害ボラセンの運営方法」。プレゼンタイトルは「コロナを踏まえた災害支援の課題~災害ボランティアセンターの可能性をあきらめない~」です。
今回はテーマが「災害ボランティアセンターの運営」なので、県内各市町の社会福祉協議会の職員さんの参加が目立ちました。講座の目的は「災害ボランティアセンターの可能性を再考する、コロナを踏まえた被災者支援について考える、どんどん変わる法制度の情報を確認する」です。
コロナでボランティア募集を県内に限る市町が多い状況の中、受付やマッチングについても試行錯誤の数年間だったようです。最初に「ボランティアを受け入れるリスク」についてグループで話し合いを持ちました。「コロナが怖いからボランティアを入れない」のか、それとも「ボランティアが来なくて片付けないから不安になるのか」、住民に寄り添って考えることが大事です。
長野の水害ではボランティアが8万人来たそうですが、7割は県内でした。でもそれは最初に県外の人が来たから県内も増えたのだそうです。つまりマスコミ報道がキーとなり、最初から県内限定では集まらなかったとのこと。また災害ボランティアの配置を急ぐ時があって、特に夏場はカビの発生で健康被害が起こるので泥出しは急務。コロナ禍であっても救える可能性は消さないのが災害ボランティアセンターなのです。
リスクのひとつに災害ボランティアセンターの受付が密になる問題があります。これを解消するために数年間かけて社会実験されたそうです。長野ではボランティアが3500人来てバス40台にもなった。でも駐車場が現地にない。これを解消する工夫は「受付を制する」ことと言われていました。ドライブスルー方式、これは車の中で受けつける方法。全社協はスマホで保険受付ができようにしたので、長蛇の列がなくなったそうです。受付時間をバラバラにする方法もやったそうですが、時間を指定してもみんなが早く来るので失敗。ボランティアはみんな真面目なんですね。場所の分散の方が有効だとわかり、google form等を使って集合場所を分けて受け付けた。これは事前に必要な人数がわかるので、個人のマッチングだけでなく、エリアマッチング・コミュニティマッチングにも取り組めるし、マッチングの質も上がることがわかったそうです。最近では、サイボウズの「キントーン」というグループウェアをカスタマイズし、全社協が全国的に研修を進めている最中だそうです。
災害ボランティアセンターはアウトリーチ型で相談支援が可能なしくみとなっています。つまり、生活の場に出向いて生活を取り戻す支援ができる。これはつまり家の中に入れるということで、コミュニティや個人の申請で可能になります。でも、役場は絶対に家の中に入れない。最近は庭には重機で入れるようになったが、行政は個人の財産には対応しないというルールがあるそうです。
災害ボランティアセンタースタッフは誰とでも喋れるので、災害時には地元の社協職員は現場やコミュニティを周り、外部支援スタッフがセンターにいる方がいいとのこと。地元の社協職員が受付をしていてはダメということです。外部スタッフは他地域の経験も豊富で「先読み」がプロなのですが、地元は現場の人の状況を知っている。この役割分担も頭に置いておいてほしいとのことでした。
最後に押さえておきたい法改正の内容についてお聞きしました。まずは避難指示と避難勧告の一本化です。避難勧告の範囲は全市一斉でしたが、自治区ごとがいいとの声があがったそうです。全市一斉では、施設の人はその度に避難しないといけないからです。次に、自治体の努力義務で「コミュニティタイムライン」の作成が入ったことです。これは災害時に発生する状況をあらかじめ想定・共有した上で、「いつ」「誰が」「何をするか」に着目して、防災行動とその実施主体を時系列に整理した計画のことです。さらに、福祉避難所のガイドラインが変わったこと、介護福祉事務所などが求められるBCP(事業継続計画)は3年以内で義務化となることなど、知っておかなければならないことが多くあるので驚きました。
今後甚大な被害が発生しても、住み続けられる・人のつながりを大切にする地域作りを応援する視点をもってほしい。また、ボランティア活動の力のすばらしさを途絶えさせず、地域とともに歩む工夫と、あきらめない思いを育てていこうとまとめられました。
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