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執筆者の写真代表 しがNPOセンター

ガラパゴス化する日本をどうするか

2020年の新春を迎えました。今年もご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

                        阿部圭宏

 

 新年早々だが、日本の未来を考えると暗澹たる気分にならざるを得ない。このような状況を4つの視点から捉え、次の時代をどうしていくのかを考えてみたい。











●日本経済の行く末


 まず、日本経済である。アベノミクスで株価は高止まりしているが、これはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による公的年金の株式運用、日銀によるETF(上場投資信託)の買い入れなどによって、官製相場を形づくっているからだと言われている。株高で、しかも大企業の収益は伸びているが、われわれ市民には好景気の実感がない。

 それも当然である。実質賃金は伸びていない上に、10月の消費増税も影響して、財布の紐が固く消費に結びつかない。企業は利益を労働者に配分せずに、内部留保に回しているからだ。2018年度の内部留保は7年連続で過去最大を更新し、463兆円を超えている。こうしたお金は、設備投資や新技術開発、研究に向かわない。

 銀行も日銀による異次元緩和により苦しんでいる。融資という本来業務での利益確保が難しくなっていて、結果的には、新事業への融資が行われず、イノベーションが起きないという悪循環に陥っている。

 明治期に三菱に財政援助し殖産興業の礎を築いたり、輸入技術の導入で高度経済成長を迎えたりというように、経済産業政策はそれなりに機能した。バブル期には、世界の大企業ランキングでは、日本企業はNTT、銀行、家電など、上位50社中32社を占めていたが、30年後の今やラインクインしているのはトヨタ(42位)のみである。

 経済大国と言われたのももはや昔のことだ。


●政治の劣化


 政治についても絶望感が漂う。現政権が数を頼みに、国権の最高機関である国会を軽視し、行政独裁状況になっている。

 その中で起こってきたのが、森友問題、加計問題、そして今回の桜を見る会問題である。

森友問題は、国有財産の払下げが不当に安い価格で行われたもので、それに総理夫妻が関わっていたかというところから始まり、公文書の改ざん、職員の自殺まで起こってしまった。加計問題は、国家戦略特区を使って総理の友達に獣医学部新設の便宜を図ったのではないかという疑惑だった。

 総理も官邸も官僚も、与党議員も疑惑を晴らす努力をせず、二つともウヤムヤのまま幕が引かれてしまった。

 それに続いて出てきたのが、桜を見る会問題である。これについては、数多くの問題が指摘されている。予算と比較しての大量の招待者を招いて三倍以上の国費を使っている。招待者の招待基準が不明確で、この中に、総理の地元後援会会員の大量招待、総理夫人の関係者や参議院候補とその後援者がいたほか、反社会勢力もいたと言われている。また、多くの被害を出したジャパンライフ会長への招待状がその勧誘に使われ、被害が拡大したとされる。

 招待者名簿はすでに破棄されたとされていて、野党ヒアリングでの官僚の受け答えの酷さも際立っている。

 これにとどまらず、ケイタリング業者が総理夫妻の友達、前夜にホテルで行われたパーティーが政治資金規正法違反でないかなど、疑惑はどんどん広がっている。

 さらに、年末になって飛び込んできたのが、IR疑惑である。ギャンブル依存、一部のカジノ業者だけを儲けさせるだけという批判が多くあるにも関わらず、拙速な形で推進されてきた。IRが成長戦略の目玉というだけでも大丈夫かと思っていたが、やはり利権に群がる構図が見えてくる。

 こうした疑惑追及に無関心が人も多い。「いつまでやっているんだとか」「こんなことより大切なことを議論しろ」というのが代表的な意見だが、こうした疑惑にしっかりと向き合えないような政治で、よりよい政策ができるわけがない。法治国家、民主主義国家だと胸を張って言えるように、われわれもしっかり考えないといけない。


●気候変動に対するコミットメント


 昨年12月にマドリードでCOP 25が開催された。「会期は過去最長となったが、妥協的な合意をまとめるにとどまった」というBBCの報道があったように、その結果は満足のいくものではなかった。日本の石炭火力発電への批判も大きかった。

日本には、もはやCOP3を主導した面影もない。東日本大震災を経験し、福島第一原発事故が収束しない中での原発や化石燃料をベースロード電源とする経済産業省主導のエネルギー政策が、日本の再生可能エネルギービジネスの成長をダメにした。例えば、COP3のときに舵を切っておけば、シャープは今のようにはならなかったのではないかとも思われるのである。

 環境活動家グレタ・トゥーンベリさんに対する批判も酷いものである。トランプは、タイム誌が今年の人に選んだことを受け、「ばかげている。グレタは自分の怒りをコントロールする問題に取り組むべきだ。友達といい映画を見に行ったほうがいい。落ち着け」とツイートした。また、小泉環境大臣は、「大人を糾弾するのではなくて、全世代を巻き込むようなアプローチを取るべきだ」「大人たちに対する糾弾に終わってしまっては、私はそれも、未来はないと思っている」と2回に渡ってグレタさんを批判している。

グレタさんの運動への若者の共感がすごい。こうした若者の動きからしか現状を変えられないのかもしれない。











●男女格差


 昨年12月に、フィンランドで女性で34歳の世界歴代最年少首相が生まれたというニュースが入ってきた。同じく12月には、世界経済フォーラムが毎年発表している最新の「ジェンダーギャップ報告書」が衝撃を与えている。対象となる153カ国のうち、フィンランドは3位で、北欧諸国は軒並み上位を占めているの対し、日本は121位と過去最低の順位だった。ドイツ10位、フランス15位、カナダ19位、英国21位、米国53位、イタリア76位なので、日本はG7の中で圧倒的に最下位である。しかも、中国は106位、韓国は108位と、いずれも日本より上位だった。

 ジェンダーギャップ指数は、「ジェンダー間の経済的参加度および機会」「教育達成度」「健康と生存」「政治的エンパワーメント」の4種類の指標を基に格差を算定し、ランキング付けされている。

ランキングは、「ジェンダー間の経済的参加度および機会」「教育達成度」「健康と生存」「政治的エンパワーメント」の4種類の指標を基に、ジェンダーギャップ指数による格差を算定したものである 

 特に日本は低い評価を与えられているのが、「ジェンダー間の経済的参加度および機会」と「政治的エンパワーメント」である。例えば、閣僚数、国会議員数、所得などが格差が大きく、これには誰もが納得するだろう。

 少子化も男女格差の現れと言える。待機児童がなかなか解消されなくて、男性の育児休暇の取得の少なさなどもあって、女性が働きながら子どもを持つことの大変さがまだまだ十分認知されていないのではないか。昨年12月には、2019年の出生数は90万人を割るという厚生労働省の発表があり、人口減少社会への流れが加速度化してきている。

 さらに、女性が表に出てきてモノを言うとバッシングされることは、伊藤詩織さんのレイプ疑惑事件でもはっきりしている。ミソジニー(女性蔑視)の姿勢がこの国の中心を担っている男たちに多い。

 女性の地位が向上し、日本社会をリードしていく中心に女性が数多く出てこない限り、次の時代の展望は開けない。




 アメリカに頼っていればよい、今の政治体制が続けばよい、日本の官僚機構は優秀だから間違うはずがない、大企業は世界と競争しているのでこれからも一流たり得るなどというのは、もやは妄想と言える。

 ではどうすればよいか。簡単なことではない。市民一人ひとりが人任せにしないで、自分のこととして考えていくしかないように思う。そうすることが未来を開く唯一の道である。

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