しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
教育に少しでも関わる人であれば、日本学術会議が推薦した会員候補の任命拒否問題には大きな関心があるだろう。会員は、学術会議法では、優れた研究又は業績のある科学者のうちから会員候補者を選考し、内閣総理大臣に推薦し、内閣総理大臣が任命することとなっていて、その任命はあくまで形式的とされる。形式的な任命であれば、当然、推薦された全員が任命されてしかるべきであるにも関わらず拒否され、しかも拒否された6人の研究者が、安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法といった法案に反対を表明していたことから、特定の研究者を排除したものと受け取られている。
↑ 秋らしく色づき始めた大津商業前の街路樹(著者撮影)
任命拒否に関する理由は、人事のことだからという一言だけで一切示されず、こうした無理筋の話を学術会議のムダとか、見直しという議論のすり替えが行われるなど、学問や研究者への敬意が感じられない対応に怒りを禁じ得ない。
今回、拒否された立命館大学の松宮孝明教授の話を聞くと、これまで約2000人いる連携会員の一人として学術会議には関わってきたと言う。年3回の部会では、旅費が足らない場合、自分の研究費を充てるなどで対応してきたとのことであり、巷間ささやかれているような高額な報酬が支給されているものではないそうだ。
自分の意に沿わない官僚は移動させると言ってはばからない現首相からすれば、学術会議の人事も同様に考えているのかもしれない。政治家に諫言しないイエスマンばかりの官僚機構になってしまうことの心配と同時に、政権の意図する方向の研究が最優先されてしまえば、もはやこの国の発展など望むべくもない。
まさか、21世紀になって学問の危機が訪れようとは誰も思わなかったのではないか。学問の自由が守られる社会を声高く叫ばなければならないとは情けない限りだが、自由で多様な研究がなされてこそ学問の発展があるということを改めて認識しよう。
教育、学問に関しては、誰でもものが言いやすい。今回の任命拒否は、今後の我々の未来に直結するものだという意思を持って対応していく必要がある。
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