しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
愛知県知事に対するリコール署名運動に大量のアルバイトが動員されていて、愛知県警が強制捜査に乗り出した。2000年8月から11月に行われた署名活動では、リコールに必要な約860,000人分に対して約435,000人分の署名が集まり、愛知県内の各選挙管理委員会に提出されたが、そのうち83.2%にあたる約362,000人分の署名が無効で、無効署名の90%が複数の人物が勝手に署名したものであるという前代未聞の展開となっている。
長浜城(撮影著者)
ことの発端は、あいちトリエンナーレ2019での企画展「表現の不自由展・その後」における展示内容や公金支出に対し、河村たかしや松井一郎、高須克弥などが大村章知事に批判を加えたことによる。大村知事の姿勢やその後の対応を見ても、極めてまっとうであり、リコール請求そのものを行うことの疑問は禁じ得ないが、ここではこれ以上触れない。
地方自治体の長や議員に対するリコール(解職請求)は、地方自治法で定められた直接請求制度の一つであり、住民自治を推進する上でも重要な仕組みである。ただ、請求要件が厳しく、都道府県や大規模自治体では署名数の要件が高いため、リコール成立が難しいのが現状である。
今回の不正の発覚は、署名活動に参加していた受任者などが同一筆跡で書かれた署名簿を発見したことのようだ。リコール不成立なのになぜ選管に提出したのか?、今回の不正の主犯は誰か?、運動を先導した高須や河村の責任は?、クラウドファンディングで約4千万円集めたという報道もあり、この資金を何に使ったのか? など、多くの疑問があるが、これからの捜査過程ではっきりしてくるだろう。
本来は、リコールはもう制度を使いやすいような改正が望まれる。必要署名数の引き下げ、署名収集期間の長期化、失職した長や議員の再出馬の制限などである。今回の事件はあくまで特殊な事例としてみておく方がよい。
最後に、不正を告発した受任者は、筆者とは考え方が違うとは言え、民主主義の根幹を守る役割を果たすことに尽力されてことには、素直に敬意を評したい。
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