しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
4月22日付朝日新聞デジタルの見出し「政府の災害備蓄品 年20万食、捨てずに生活困窮者へ」という記事を見てのけぞった。政府の災害備蓄食品は全省庁で100万食あり、賞味期限切れの入れ替えで年間20万食分が廃棄処分の対象となっている。これをフードバンク団体に提供して、コロナ禍の生活困窮者らの支援にいかすというものだ。
この記事を読んだ人は、どのように評価するだろうか。食品ロスをできるだけ少なくするというのは時代の要請だし、資源の有効活用という面では確かに評価できる。生活困窮者の支援をしているフードバンクにとっても、食品の受け入れは活動する上でもプラスになるだろう。ただ、これを美談として片付けるのは非常に大きな問題がある。それは、政府のそもそもの役割ということを考えれば分かるだろう。
政治家のホームページには、「国民の生命と財産を守る」ということがよく書かれている。これは、的確に政府の役割を表現するものだが、最近はこうしたことを言われても、信用していない人が多いのではないだろうか。新自由主義が跋扈して、効率化を目指すあまりに、政府として果たすべき社会保障の充実や税の再配分機能が低下していて、本来対応すべきことをやらないで、政治家や官僚が平気で災害備蓄食品の処分をコロナ禍の生活困窮者の支援と言ってしまう感覚がとても恐ろしい。
満開のハナミズキ(筆者撮影)
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コロナ対応では、3回目の緊急事態宣言が出された。首相の記者会見では、全国で感染者数と重症者が増加していて、特に変異ウイルスが懸念されるため、大都市の感染拡大が国全体に広がらないように、大型連休という多くの人々が休みに入る機会を捉え、効果的な対策を短期間で集中して行うというものだそうだ。そもそも前回の緊急事態宣言を解除することには、多くの懸念があったのに、そうした声を無視してなぜ解除したのか。
吉村大阪府知事がテレビ番組で、これまでの対応は成功したが、今回は急速に変異株が広がったため、緊急事態宣言を国に要望したという発言をしていた。このいい加減さに呆れかえってしまった。大阪府は、2月末で緊急事態宣言の解除要請をして、4月からはまん延防止等重点措置を要請し、その期間が満了しないまま緊急事態宣言を要請している。3月中旬から感染者が増大したが、これは変異株のことを全くと言っていいほど考えていなかった結果だ。すでに重症病床数は足らない状態で、自宅療養者は9,051人(4月21日現在)で4月だけで感染後9人が自宅で亡くなっているという。大阪府は看護師の派遣や重傷者受け入れを要請し、滋賀県では重傷者1人を受け入れている。
大阪では、昨年も病床数が足りずに、「大阪コロナ重症センター」を稼働させたが、看護師数が足りずにフル稼働できていなかった。このような場当たり的な対応しかしてこなかったことも含め、大阪府の人たちはもっと怒るべきだ。少なくとも大阪府の感染者爆発が近畿全体の感染者数増加の主因だということで言えば、滋賀に住むわれわれも怒ってもよい。
政府や自治体ががこれまでに行ってきたコロナ対策の中には、国民1人に対する10万円の特別定額給付金、休業支援金・給付金、雇用調整助成金、休業要請協力金などがあるが、十分に機能してきたとは言えない。ワクチンが普及して世の中が落ち着くまで、政府・自治体はしっかり国民の生活を支えなければならない。政府が非常時にしっかりと対応できるよう、一人一人がいろんな場面で訴えていく必要がある。
最後にオリンピックのことにも触れてみよう。
コロナ感染症とオリンピックの聖火リレーや代表決定のニュースが同じように違和感なく流されている。これを見て、おかしいと感じる人は多いだろう。9月に追加ワクチン輸入で合意という話も出ているが(実際に輸入できるのかという話は別としても)、そもそもオリンピック開催時期の後である。世論調査でも再延期と中止を含めると7割近くになり(3月22日付朝日新聞)、多くの人がオリンピック開催を望んでいない。にも関わらず、マスコミでは中止キャンペーンがされることはない。マスコミも政府と同じように機能していないのではないか。
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