しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
前回のコラムで、オリンピック報道に関して、マスコミは機能していないのではないかということに触れたが、遅まきながら朝日新聞が「中止の決断を首相に求める」という社説を掲載した(5月26日付朝刊)。世論は完全に開催中止や延期を求める声が大きく、政府に対してコロナ対応を先にすべきで、オリンピックなどやっている場合ではないという意思表示がなされているのだ。
にも関わらず、日本政府は開催に前のめりだ。首相は、「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じて、安心のうえ参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく」という国会答弁を繰り返していて、この政府は国民の安全など何も考えていないのだということを改めて感じた。
連日テレビでは、コロナ報道とあわせるように、聖火リレーの実施状況や代表選手のことが流されている。オリンピックの感動とコロナの不安を一緒に体験させようとするものだ。このままオリンピックが始まってしまえば、コロナに感染して苦しんでいる人、コロナ感染の恐怖に怯える人が多くいる一方で、活躍するアスリートの感動物語が連日テレビ等で垂れ流されることになるだろう。
コロナ対応の最後の切り札とも言えるのがワクチンだ。毎日、ワクチン接種に関する情報がマスコミで流されている。今行われているのが高齢者で、政府が尻を叩いてやっと7月末に終わるとのことだ。もっと早くワクチン確保ができていれば、こんなに混乱はなかったかもしれないが、最前線に立たされている自治体は大変だ。一般市民へのワクチン投与はまだまだ先で、オリンピック開催時には多くに人にはまだ投与されていないとう現実をどう考えるかだ。
オリンピック憲章には崇高な理念が書かれているが、実際はどうか。商業主義に走り、全てが金の世界になっているように思われる。巨大放映権料に支えられ、東京オリンピック誘致には未解決の贈収賄疑惑がある。このまま開催できないと大きな経済損失を被るという話もよく出されるが、そもそも純粋なスポーツをマネー一色に変えたのがオリンピックの負の遺産と言えるだろう。
オリンピック中止で多額の損失が出ても、日本国民の多くは納得するだろう。スポーツの裾野を広げる上でも、学校スポーツや地域スポーツが安心してできるような環境になるまで、オリンピックなどというものに固執すべきではない。
早く中止の決断をすべきだ。
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