しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
衆議院議員の任期満了が近づき、衆議院の解散時期がいつになるかという話題が政局を賑わせている。衆議院銀の任期は4年だが、任期をまっとうした選挙は現憲法下では1回しかない。言い換えれば、ほとんど任期途中での解散が行われているということだ。首相も解散時期はいつかと記者に問われ、「適切に判断する」と答えているが、そもそもこの問答がおかしいのではないか。誰もが解散を所与のものと捉え、任期満了までしっかりと務めるという発想がない。
解散権は首相の専権事項であり、首相のみが行使しうる伝家の宝刀だと言われる。解散に明確な理由もなく、単に権力保持のためだけに行われても、政治的・道義的な責任を問われることはあっても、法的な責任は一切ない。首相が解散権を握っているということは、衆議院議員が与野党を問わず常に解散を意識しながら議員活動を行うことになる。参議院議員のように6年任期を務めることで計画的な議員活動ができるが、衆議院議員の場合は落ち着いて仕事ができない。
ブランチ大津京(筆者撮影)
首相の解散行使は、日本国憲法第7条の天皇の国事行為を根拠に行われている。第69条は内閣不信任決議に対する対抗手段としての解散を規定しているが、現憲法ではどのような場合に解散できるかが明確に記述されていないため、逆に自由に解散できるという解釈が行われている。解散カードの切り方のハードルが低いために、首相はまさに好き勝手に解散できる。解散後の総選挙で勝利すれば、それまでの批判が和らぎ、政権維持に役立つと思うのだろうか。逆に追い込まれての解散だと、過去には政権交代まで至ったものもある。
日本国憲法には「国会は国権の最高機関で、国の唯一の立法機関」(第41条)という規定があり、本来は立法権が行政権より力があるはずだ。立法権に対抗するために、解散権があるとも言える。司法は、衆参同日選挙に対する違憲訴訟で、高度に政治的な問題は統治行為論により判断しないという姿勢を貫いている。司法権を含めて、三権分立という思想は大切だが、現実には行政権が突出していることの弊害は大きいと言えるだろう。
イギリス、フランス、ドイツなどのように議院内閣制を取り入れている諸国では、首相の解散権に制限を加えている。OECD加盟国の中でも、自由に解散権を行使できるには限られているそうだ。日本の場合も、解散カードが恣意的に使われないようにするためには、法律による手続きのコントロールという方法も考えられるが、最終的には国民による選挙の監視しかないのかもしれない。
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