しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
総選挙が終わった。投票率は55.93パーセントで、前回の総選挙が53.68パーセントであったことからすると、確かに少しは上がっているが、戦後3番目の低さ、4回続けての50パーセント代と、国民が自らの権利を行使していない状況は深刻だと言える。選挙の争点にはさまざまなものが提示され、政策を競い合うという意味では、選挙らしい選挙という一面もある。ただ、これだけ争点があるにも関わらず、テレビでの選挙報道に関係するものは非常に少なく、衆議院選前に行われた自民党総裁選挙の過熱報道ぶりと比較すると、その異常さがよく分かる。実際、テレビ各局の自民党総裁選挙では29時間55分に対し、衆議院選挙では25時間52分だという調査もある。(注1)
何も投票率が上がらないのは、報道だけのせいではない。日本で男女平等に選挙権が与えられたのは戦後改革の中であり、民主主義を自らが勝ちとったということではないために、選挙に対する意識が低いという点も否めない。学校での民主主義教育(シチズンシップ教育)が行われてきていないことの影響も大きいだろう。若者が選挙に行かないのは、若者が悪いのではなく、選挙の意味、政治に参加する意義を教え、自分の主張を堂々としていいんだと言える教育をしてこなかった結果とも言えよう。
ジェンダー視点、選択的夫婦別姓などの基本的人権に関わる民主主義の根幹とも言える政策はあまり重視されず、有権者の関心は、NHKの世論調査では「経済・財政政策」「新型コロナ対策」「社会保障制度の見直し」といった論点が上位を占めている。確かにコロナの影響をはじめ生活困窮する人が増え、そのための政策は喫緊の課題であるが、景気浮揚策も金をバラまく以外の知恵もあまりなく、どうすればよいのかという視点が与野党ともに欠如している。
日本も英米にならって中曽根政権以降、民営化の推進など、新自由主義をはびこらせてきた。戦後からの欧米に追いつき追い越せというキャッチアップ型で経済成長を続けていたものが立ち行かなくなり、失われた30年というもはや先進国とは言えない状況に陥っていることへの対応は全く見えない。企業も目先の利益にこだわり、このまま行けば、国自体が存在しなくなる可能性もある。
今の選挙制度がいろいろな歪みを抱えていることは誰の目にも明らかであるが、これを変えていくのは至難の技である。
そこで提案一つ。候補者均等法では、政党に男女の候補者をできる限り均等にするよう努力義務を課しているし、男女共同参画社会基本計画には2025年までに国政選挙の候補者に占める女性の割合を35%とすることが明記されている。しかし、実際の女性候補者は、自民党が9.8%、立憲民主党18.3%となっていて、これでは女性議員はなかなか増えない。与野党ともに「昭和のおじさん政治」を脱却し、世代交代を進めるとともに、女性候補者を増やすことを義務付けることである。そこからしか始まらないような気がする。
朽木にて筆者撮影
[1] 総裁選告示・衆議院選公示の当日と前後2日(土日を除く)のNHK(総合・Eテレ)在京民放キー5局の放送時間を集計。プロジェクト社調べ。
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