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統計不正

           しがNPOセンター


                     代表理事 阿部 圭宏


 建設業の月々の受注状況を推計する「建設工事受注動態統計調査」で、国土交通省の不正が発覚した。これは全国の建設業者の受注実態を詳細に把握するための調査で、政府は基幹統計に指定しており、GDP(国内総生産)の算出にも活用している。


 不正報道等を受けた形で、国道交通省は「建設工事受注動態統計調査の不適切処理に係る検証委員会」を設置し、1月14日に報告書が公表された。報告書によると、不正が始まった時期を2000年以前からとしていて唖然としてしまう。さらに、会計検査院が合算処理を問題化し、早急に総務省に相談すべきと指摘した後も不正は継続していた。



琵琶湖大橋と冠雪の比良山(2022年1月10日 筆者近影)


 会計検査院が不正に気づいたのは、2018年の厚生労働省の毎月勤労統計調査をめぐる不正が発覚し、参議院決算委員会から「公的統計の整備に係る業務の実施状況等について」に関して要請を受けて検査をしていたことによる。


 毎月勤労統計調査の統計不正は国会でも取り上げられて、統計そのものへの信頼を揺るがせない大問題となり、政府は国の統計全体を再調査した。総務省からの依頼による一斉点検、それに続く基幹統計調査の予備審査もくぐり抜け、国土交通省が不正を続けた利用は何なのか。委員会の報告を受け、職員の処分が発表されたが、不正の動機など未解明な部分も多く、引き続きこの問題に注視したい。



琵琶湖大橋と冠雪の比良山(2022年1月10日 筆者近影)


 ところでGDPと言えば、安倍政権下の2016年にGDPの算出基準が変更された。変更理由は国際基準に合わすためとされ、企業の研究開発費が新たに加わり、基準年が2005年から2011年に変わった。安倍首相は、施政方針演説で「経済は7年間で13パーセント成長し、来年度予算の税収は過去最高となった」と語った。この13パーセントは、政権復帰前後2012年10~12月期のGDP約493兆円と2019年7~9月期の約559兆円との比較らしい。算出基準が変わっているにも関わらず、その説明が一切なされないまま、成果だけを強調しているようにも思われる。


 国土交通省や厚生労働省の統計不正は長年にわたって行われてきているので政権によって歪められたものではないと思うが、数字は一人歩きするものだけに、改めて統計に対する信頼感を高めることに政府が邁進するとともに、我々も数字を鵜呑みにするのではなく、ウォッチしていくことが望まれる。


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