しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
ロシアのウクライナへの侵攻、中国の覇権主義など、国際情勢は混沌としている。ここに来て、ロシアや中国などの権威主義国家が台頭し、民主主義を凌駕する勢いという構図が見えてくる。権威主義体制とは、「政治権力の集中度、権力と自由の関係、統治の方法、イデオロギー、政権の正当性などの面において、全体主義体制と民主主義体制の中間」(関志雄・産業経済研究所)に位置付けられるという。
大津港に停泊中のビアンカ号(筆者撮影)
民主主義体制は欧米を中心として広がってきたが、日本でも一般的な政治体制と思われている。日本の政治の現状を見ると、とても満足できるものとは言えないが、アメリカのNGOフリーダムハウスが毎年発表している世界自由度の国別ランキングで、日本は198の国・地域のうち12位(2021年)、イギリスのエコノミスト・インテリジェンス・ユニット研究所が毎年発表している民主主義指数では、167の国・地域のうち17位と非常に高く、こうしたランキングを見る限り、日本には民主主義が根付いていると考えてよい。
しかし、例えば、アジアに限っても、民主主義体制は日本、韓国、台湾などの国・地域に限られているし、世界的にも民主主義が政治の主流を占めている状況ではない。実際、ロシアではプーチンの人気は圧倒的だし、習近平の対外的な強硬姿勢もいろいろ波紋を投げかけているものの国内的には支持されている。
大津港から冠雪の比良山を望む(筆者撮影)
世界を揺るがし続けている新型コロナ対策では、私権の制限が問題になった。中国では北京オリンピックでのコロナ対策の厳しさは連日報道されていたが、これまでの中国でのコロナ対策の徹底ぶりを見るにつれ、自由の大切さをしみじみと感じる人は多かったのではないだろうか。欧米でもコロナ対策として、外出禁止命令に違反した場合に罰金を課す国もあるが、日本の場合は、あくまで「要請」であったことは納得できるものあったと思う。
政治家の中には、憲法改正の中に「緊急事態条項」を入れるべきとの意見が根強くあるが、こうした行為はまさに民主主義の破壊につながりかねない。せっかく手に入れた自由と民主主義を守っていくことが日本のためだけでなく、世界に民主主義を広げていくことにつながると思う。
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