しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
ロシアがウクライナに侵攻してから1ヶ月が経った。ロシアの一方的な侵攻がメディアで報道される中、プーチンは世界から批判されても一向に侵攻を止める気配はない。プーチンのウクライナ侵攻の動機は、ウクライナ東部でのロシア系の住民をウクライナ軍の攻撃から守り、ロシアに対する欧米の脅威に対抗するというものだ。
ロシア侵攻で市民が巻き添えによって、あるいは意図的な攻撃によって被害を受ける凄惨なシーンが、毎日、テレビやインターネットを通じて流されている。今回はロシアの軍事活動が洗いざらい暴露されている感じがするが、ロシアはチェチェンやシリアでも同じように都市攻撃をしてきたと指摘する人もいる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、連日、世界への支援の呼びかけを行うとともに、徹底抗戦を国民に呼びかけている。すでに国外へ脱出した難民は380万人を超えていて、国内にも数多くの避難民がいる。ゼレンスキーの支持率は90パーセントにもなっているので、今後もウクライナは徹底抗戦するのではないかと思われる。陥落寸前と言われているマウリポリでは、ウクライナ国家親衛隊に属するアゾフ連隊がここを拠点にロシア軍と戦っていて、こうしたアゾフ側の映像も多く投稿されている。アゾフ大隊は、公安調査庁のホームページによると、2014年、ウクライナの親ロシア派武装勢力が、東部・ドンバスの占領を開始したことを受け、「ウクライナの愛国者」を自称するネオナチ組織が「アゾフ大隊」なる部隊を結成したものだと言う。 現在は、大隊から連隊へとなって、ウクライナ内務省の国内軍組織である国家親衛隊に属しているが、その評価はさまざまである。
ロシアのチェチェンやシリアでの都市攻撃は、今回のように大々的に報道されなかったこともあり、かえってウクライナでの悲惨な状況がクローズアップされたとも言えよう。これからもウクライナ側の抗戦が続けば、市民への被害はますます広がり、これに加えて生物化学兵器や核兵器のような非人道兵器が使用されるようなことにでもなったら取り返しがつかない。
一方、ロシアに対する欧米の対応は、経済制裁と武器等の援助である。直接の戦争にはならないとは言え、武器供与は戦闘を拡大させ、戦争被害が甚大なものとなる。日本も防衛装備移転三原則の運用を見直して、防弾チョッキやヘルメットを送ったが、今後、さらに拡大解釈されて三原則が形骸化するのではないかとの懸念もある。
もう一つ忘れてならないのは、ロシアの攻撃シーンを見て、実は、アメリカがやってきたアフガニスタン、イラクなどでの空爆も同じように多くの一般市民を殺害してきたことだ。
日本ではかつて「非武装中立」が言われていた。自衛権を放棄するなんてお花畑かと言う人も多いだろう。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を見て、軍事に頼れば軍拡に向かわざるを得ず、軍拡競争は果てしなく続く。戦争は誰も幸福にしないということを一人ひとりが自覚して行動する必要がある。
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