しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
物価上昇が止まるところを知らない。食料品、ガソリン価格、電気代などの値上げによって、日常生活に大きな影響が出ている。アベノミクスを支える日銀の金融政策では、2パーセント物価上昇を目標として異次元の金融緩和をしてきた。こうした金融緩和策は功を奏しなかったにも関わらず、ウクライナ侵攻を契機に、世界的なインフレが進んでいる。物価高は日本にも押し寄せているが、これは本来、日銀が望んだ物価高の姿ではない。
世界的にはインフレ抑制のために中央銀行が政策金利を上げている。日銀だけがゼロ金利政策を継続し、内外金利差が円安を誘導している流れになっている。日銀総裁に言わすと、それでもゼロ金利政策を断行するのだそうだ。
確かに、日本の物価は安すぎるのかもしれない。世界のビッグマック価格の比較では、2022年1月時点(1ドル約115円)では、アメリカが669円で3位、ユーロ圏571円で5位、中国26位、韓国27位と続き、日本は390円で33位となっている。海外へ出かけると、物価の高さにびっくりすることも多いと思う。これに円安が拍車をかけている。
物価高に比例して賃金が上昇すればそれほど問題にならないが、日本の場合の21世紀に入ってから平均賃金はほぼ上がっていないため、物価高が生活に直接影響する。2020年のO E C D加盟国の購買力ベースの平均賃金を比較すると、1位がアメリカで日本はその半分強にしかならず、O E C Dの平均以下で、韓国よりも下位に位置している。
社会を安定的にさせていく分厚い中間層というのがだんだん薄くなっている。大金持ちはどんどん稼ぐのに対し、貧困に陥る人が増え続け、新型コロナ関連でも社会的な孤独孤立も大きくクローズアップされている。
(写真全て びわ湖大津館とその周辺にて筆者が撮影)
もはや、政府も日銀も打つ手がないのかもしれない。このまま物価高、円安、安い賃金の状態が続けば、どうなるのだろう。選挙向けの各党の公約を見ていてもどうしようもないと思うのが実感だが、この国の人は誰も怒らない。諦め感が強いのかもしれない。
このまま行けば、少子化はますます進むだろう。希望の持てない国で、誰もが安心して結婚や子育てをしようとは思わないだろう。ウクライナ危機に乗じて防衛予算を拡大しようと躍起になっている与党は、安全保障環境が整ってもそこに暮らす人々の生活が安定しない状況をどのように考えているのだろう。目先のことにとらえわれすぎて、中長期的な国家ビジョンを語らない政治家の責任は大きいが、今の閉塞感を打ち破るためにみんなが怒りを表して意見を言っていくことが大切だと思う。
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