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安倍国葬とは何だったのか

           しがNPOセンター

                     代表理事 阿部 圭宏



 安倍晋三の国葬が、多くの市民の反対を受けながらも強行開催された。国葬当日、午後4時過ぎに帰宅しテレビをつけると、どの局も国葬中継の真っ最中である。賛否の中ということが明示され、反対デモの様子も映し出され、首相の説明不足、根拠の希薄さなども解説されているものの、結局はライブ中継することで国葬そのものの雰囲気が空気を支配し、「国葬を是」と言っているのも同じような気がする。


大津市内三井寺界隈(筆者撮影)


 岸田首相は安倍の死から6日後に、突然、国葬をすると記者会見で言った。筆者もなぜ国葬なのかと思ったように、国葬決定時から様々な反対意見が出ていた。それでも当初は賛否が拮抗していたのが、最近のマスコミ各社の世論調査では、いずれも反対が賛成をかなり上回っている。統一教会問題が大きくのしかかっていたことは間違いないし、多額の国費支出への疑問もあったが、そもそもなぜ国葬なのか、国葬の根拠は何かなどが明らかにされずに、国葬ありきで動いてきたことが国民の不信を増大させたと言えるだろう。


 首相は国葬の理由を、憲政史上最長の首相在任、震災復興・日本経済の再生・外交などでの歴史に残る業績、諸外国からの弔意、選挙中の非業の死であり、暴力に屈しない姿勢を示すことの4つだ。これが理由だとすれば、いかにもご都合主義と言わざるを得ない。


 今回の国葬の根拠は、内閣設置法と閣議決定だという。国葬令が失効した戦後で、唯一行われた吉田茂の国葬では、貞明皇后大喪儀の例(閣議了解により執行)を決定のよりどころとして、政府として国費によって葬儀を行うことを閣議決定することによって事実上の国葬を行えるものと結論された。野党への説明も行われ、一定の理解も得られたという。ただ、国会では事後に野党から法的根拠を問われている。


 佐藤栄作も国葬が模索されたが、野党が反対したこと、法的根拠が乏しいこと、内閣法制局による三権の了承が必要との意見もあり、内閣と自民党と国民有志による国民葬となった。以後は、内閣・自民党合同葬の形式がとられた。歴代内閣は、いろいろ考え、野党にも配慮しながら事を進めてきたのに対し、岸田首相はあまりにも杜撰な対応をした。


大津市内 うさぎ年生まれの守り神 三尾神社(筆者撮影)



 では、国葬の根拠は何か。説明が二転三転しているが、とりあえずは内閣府設置法にいう国の儀式なら閣議決定でできると内閣法制局が判断して、国葬することになったとされる。岸田首相は、国会答弁で「国民に強要することでない限り、法律は必要ないとの学説」(=侵害留保説)に基づき、内閣の行政権の範囲で行い得るとした。国民の権利を侵害しないということは、結局、国民に服喪を強制しないということになり、そもそも国葬であることの意味づけがなくなってしまっているとも言える。これまでの内閣・自民党合同葬であれば、統一教会問題がこれだけ騒がれていても、ここまで反対の声は挙がらなかっただろう。


 そもそも国葬なるものは、法の下での平等に違反するのではないかという根本的な問題がある。明確な基準がない中で、安倍晋三という特定の人物を国葬にしてしまったことは、日本のこれからの民主主義を守っていく上でも大きな汚点となるだろう。右派にとっては、我らの英雄安倍晋三を神格化、偶像化、権威化できたことで、いろんな場面でこの国を権威主義へと導く材料に利用してくるだろう。こうした動きをしっかり監視していく必要がある。


 最後に、法の支配のことも触れておきたい。岸田首相が国連総会一般討論演説で「国際社会における法の支配を推進する国連の実現」ということを言っている。岸田も安倍も「法の支配」ということを国際社会に向けては言っているが、それでは国内的にはどうなのか。最高の国権機関とされる国会を無視し、何でも閣議決定でできるという姿勢は、法治国家としての体面を保っていない。今の政治が続く限り、この国は没落していくほかない。


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