しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
マイナンバーカードの申請でもらえるマイナポイント事業が2月末で終わった。申請数は72.2パーセント(2023年2月26日現在)となっていて、芸能人などを使ったテレビキャンペーンと申請期間の延長等があってこの数字になっている。マイナポイント事業にかかった予算は2兆円を超えると言う。カード取得者に最大2万円分のポイントを付与する経費に加え、キャッスレス事業者に支払う事務費、テレビコマーシャル代も含まれていて、これだけの税金が投入されていることに驚愕する。
マイナポイントは、当初の登録による5,000ポイントに加え、第2弾では健康保険証としての利用で7,500ポイント、公金受取口座の登録で7,500ポイントとなっていて、昨年10月には2024年秋での健康保険証廃止が打ち出された。運転免許証との一体化もなされる。
健康保険証の廃止は、事実上のマイナンバーカードの義務化となる。2月に開かれた厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会の資料によると、「マイナンバーカードによりオンライン資格確認を受けることができない状況にある者が必要な保険診療等を受けられるよう、当該者からの求めに応じ、各医療保険者等は、医療機関等を受診する際の資格確認のための「資格確認書」を、書面又は電磁的方法により提供する」となっている。保険料を払っていても、資格確認という方法で差別的な取扱いを受けるということだ。
霊峰伊吹山と朝日(筆者撮影)
実は、こうした差別的な取扱いはすでに行われていて、マイナ保険証導入・普及のために診療報酬への加算が行われているが、自己負担3割の場合、マイナ保険証では初診料6円、従来の保険証で受診した場合等は初診料12円の負担となっている。この4月からは、従来の保険証のみ初診が18円、再診時に6円と値上げになる。
そもそも、マイナンバーカードは、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に基づいて発行されているもので、そこではマイナンバーカード以外にも本人確認の方法はあるし、申請により、個人番号カードを交付するということが書いてあるだけで、取得を強制されるものではない。
長々とマイナンバーカードの義務化のことを書いてきたが、もう一つ気になることがある。情報漏洩のことだ。例えば、2018年には、国税局は源泉徴収票などデータ入力業務の委託先が、本来の契約に違反して別の業者に再委託したことにより、マイナンバーを含む個人情報約70万件が流出したと明らかにしている。このような事例は枚挙にいとまがない。
デジタル庁は、個人情報が集積・集約され外部に漏えいするのではないかといった懸念、マイナンバーの不正利用等により財産その他の被害を負うのではないかといった懸念、国家により個人の様々な個人情報が一元管理されるのではないかといった懸念に対し、制度面やシステム面でさまざまな措置を講じているから大丈夫だと言っている。
湖北の朝日(筆者撮影)
罰則を強化しているから大丈夫ということはなく、また、システムをしっかり構築しているから絶対安心ということにはならない。マイナンバーカードを管理する本人も、紛失、暗証番号の漏洩などのリスクがある。今の政府には個人情報は渡したくないという人もいるだろう。
テレビコマーシャルや政府広報を見る限り、マイナンバーカードのよい面だけが強調されすぎている。筆者を含むマイナンバーカード取得を望まない人へのフォローをしっかりとするべきではないだろうか。
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