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執筆者の写真代表 しがNPOセンター

統一地方選が終わって〜杉並からの風を感じて

更新日:2023年5月29日

   しがNPOセンター                      

                 代表理事 阿部 圭宏


 統一地方選が終わった。前回のコラムでも触れたように、投票率の低下傾向は歯止めがかかっていない。例えば、滋賀県議会議員選挙の確定投票率は、42.51%で、過去最低だった前回の選挙の43.13%を下回り、過去最低を更新した。ちなみに、2011年の選挙以降、4回連続で過去最低を更新している。統一地方選にあわせて実施された衆参補欠選挙のいずれの選挙区も前回投票率を下回っている。


 こうした低投票率を打破し、若者の投票率アップを目指す「ボートマッチ」という仕組みを杉並区選挙管理委員会が実施しようとしていた。ボートマッチとは、選挙で投票する候補者の政策を有権者が考える政策と一致させる仕組みのことで、国内では2000年代以降、報道機関を中心に国政選や知事選などで実施する例が増えている。ヨーロッパで1980年代に始まり、インターネットの普及に伴い、有権者が自身の主張と近い候補者を調べるツールとして定着しているという。


 今回の統一地方選では、府県議選のボートマッチをN H Kが大々的に行ったが、それを利用する有権者がどれくらいいたのかは気になるところである。


(広島市 原爆ドーム 筆者撮影)


 杉並区では、課題となっていた若年層を中心とした投票率向上のために、インターネットを活用した新たな手法の啓発事業として、投票マッチング事業の準備が進んでいた。あらかじめ立候補予定者に答えてもらった20の質問項目に「賛成」「やや賛成」「中立」「やや反対」「反対」の5択で有権者が回答すると、専用サイトで一致率が高い順に候補者名が表示される仕組みで、重視する項目を三つまで選ぶと、一致率に強く反映させる機能の導入も検討されていた。選挙管理員会では、立候補予定者への質問が恣意的にならないよう区民12人で構成する「投票率アップ企画委員会」を設置し、質問案を固めた。


 ところが、ボートマッチに対して総務省からの横槍が入る。松本総務大臣は記者会見で、「選挙管理委員会がボートマッチを行う場合、限られた設問で、公平・公正性が確保できるのかなど、課題や懸念がある」「選挙管理委員会の委員や、職員による選挙活動の禁止に抵触すると判断された場合には、罰則が科される可能性もある。また、選挙の自由・公正が害されたと判断された場合は、当該選挙が無効とされて、再選挙を余儀なくされる可能性もある」と述べ、この見解を全国の選挙管理委員会に通知したという。この通知によって、選挙管理委員会はボートマッチ事業を中止せざるを得なくなった。




(広島市 原爆ドーム 筆者撮影)


 今回の大津市議選をとってみると、定数38人に対する立候補者は47人で、候補者ポスター掲示板を見ても誰か分からない。選挙公報も投票日直前しか届かず、これでは誰も投票に行こうとしない。「投票に行こう」という選挙管理委員会の広報車を見ると悲しくなるだけだ。誰も投票率を上げたくないのだと思えてしまう。


 岸本聡子杉並区長は、選挙管理委員会が考えて取り組もうとしたボートマッチの中止を残念がったが、自身は投票率アップを目指して、4月12日から告示日前日まで、「ひとり街宣」を行った。選挙期間中も積極的に選挙応援を行い、投票率は43.66%と前回から4.19ポイントアップした。


 ちなみに、杉並区議会選挙では、定数48人のうち、女性が24人、男性が23人、性別非公表が1人という結果となって、女性議員の比率が一気に上がった。現職議員が12人も」落ちている。岸本区長のエネルギーと今回の投票率、女性議員の数とかを見ると、政治を変えることを諦めてはならないとつくづく思う。政治をもっと身近なものとして市民が考えることで、政治を変えられる。

 

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