しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
政府が異次元の少子化対策の具体的な中身となる「こども未来戦略方針」を正式に決定した。この3月に発表したたたき台では、2022年に生まれた子どもの数が過去最少を更新したことから、2030年までを少子化対策のラストチャンスと位置づけをしていた。この政府の認識は遅かったとは言え、やっと動き出すことになったのかという期待感もあった。
「こども未来戦略方針」は、少子化対策に関する中長期的なもので、少子化対策を異次元と位置づけ、構造的賃上げや社会全体の意識改革、すべての子ども・子育て世帯への切れ目のない支援など、少子化対策の抜本的な強化を図ることとしている。
少子化の根本的な原因を「経済的な不安」「社会的な孤立」「子育ての負担」とし、これらを解消することを目的に取り組むとしている。具体的に挙がっている項目は、児童手当の拡充、保育料の無償化や減免の拡充、子どもの医療費の無料化、子どもの預かりサービスの拡充、共働き家庭への支援、子育てしやすい社会環境の整備、子どもの権利の尊重、子育てに関する意識改革など多岐にわたるが、これは異次元の少子化対策というより、子育て支援策の拡充という表現が相応しいように思われる。
(草津宿道標 筆者撮影)
2024年度から2027年度までの3年間で年間3兆円台半ばの予算を確保し、集中的に取り組むとしているものの、その3分の1が児童手当の財源に使われる。
子育て支援策の充実は当然であるが、これだけだと、子育て世代にはいいかもしれないが、これから結婚したいという若い人たちには救世主とならない。今の若者の置かれている状況は深刻だ。非正規雇用が増え、結婚どころでない状況が続いている。結婚したいのに結婚できない若者のことに真剣に向き合わないと少子化問題は解決に向かわない。若者の所得を増やす社会的な仕組みであるとか、選択的夫婦別姓の導入、事実婚に対する様々な保障など、異次元で取り組むべきことは多い。
もう一つ問題になっているのが財源だ。財源確保策として、医療保険料の上乗せを念頭に支援金制度の創設や徹底した歳出改革を行うとして増税は否定している。安定財源を28年度までに確保し、その間はこども特例公債を発行するとした。医療保険料への上乗せや社会保障費の歳出改革での財源確保も検討しているという。診療報酬や介護報酬の抑制は、医療や介護の人材不足に拍車をかけかねないし、高齢者の自己負担増は高齢者介護・医療を崩壊させる危険性もある。
(草津駅前広場の松 筆者撮影)
社会保障は高齢者に圧倒的に予算が使われ、若者や子どもには使われていないということが言われるが、高齢者の今の状況を見ると、個人差が大きいとはいえ、全体としてはとてもバラ色の生活を送っているようには見えない。政府のムダ遣いは東京オリンピック、GoToトラベル事業、防衛費、マイナポイント事業と、目につくところだけを見ても巨額にのぼる。
根本的な金の使い方を考えないと、結局、どの世代も不幸になってしまう。
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