しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
若き哲学者、マルクス主義研究者である斎藤幸平の本がよく売れているそうだ。マルクス主義というものは、もはやこの世から忘れ去られてしまっていたが、マルクスが考えていたことを丹念に読み解き、そこで目指していた社会の姿を現代に蘇らせようとしている。
特に、斎藤が注目するのがアソシエーションである。アソシエーションは自発的な組織であり、マルクスの時代であれば、労働組合や協同組合など、今の時代に置き換えると、広い意味でのNPOである。こうしたアソシエーションの大切さは、柄谷行人も指摘しているとおりである。
(撮影筆者)
これまでの伝統的なアソシエーションの代表たる労働組合は、現代社会ではどうなっているだろう。日本の労働組合は、政治闘争を含め、労働運動だけではなく、社会的装置として市民運動の中心を担ってきたが、中曽根行革で国鉄が民営化され、官公労の中心を担ってきた国労がなくなり、総評も解体されて、労働組合の中心は民間労組が主導する連合へと移って、その機能はだんだん失われてきている。日本の民間労組は企業別なので、企業との利害が一致することもあって、会社の意向に逆らえない。また、非正規労働者が増えていることが主な原因として、労働組合への加入率は年々下がり、2022年には16.5%まで下がっている。
(撮影筆者)
こうした資本主義の中で、そのあり方や社会的問題を解決していくために、もう一度アソシエーションの役割を考えていく必要がある。NPOの中でもアソシエーションとして期待されている市民活動団体が、社会的サービスを開発し、提供してきたことには大きな意味も持つが、社会を変えていく、あるいは社会にいろんな問題を訴えていくといった市民運動のところはまだまだ弱い。
運動性を備えた市民活動団体が増え、活発に活動することに期待したい。
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