しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
2010年を契機として孤独死や無縁社会という言葉が日本社会に衝撃を与え社会問題化してきた。この頃から非正規雇用の増加による雇用環境の変化、人口減少、少子化、高齢化、核家族化、未婚化・晩婚化、単身世帯や単身高齢者の増加といった社会環境の劇的な変化が進み、地域社会を関係性は希薄化の一途をたどり、孤独・孤立を加速させてきた。
2020年に突如として発生し、猛威を振るった新型コロナ感染症の流行は、改めて孤独・孤立という問題を考えさせる機会となった。外出自粛や対面での面会制限が行われ、学校でのオンライン授業や職場でのテレワークなど人々の交流のリモート化が進められた。オンライン化、リモート化のメリットもあるが、コロナの社会生活に与える影響は計り知れないほどのインパクトを与えた。女性の非正規雇用水準は減少傾向となり、生活困窮、生活不安などの相談が増えた。地域の子ども食堂、高齢者の居場所づくりなどの取り組みなども休止を余儀なくされた。さらに、自殺者の増加、DV 相談件数の増加、児童相談所の児童虐待相談対応件数の増加、不登校児童生徒の増加など、多岐にわたって孤独・孤立の問題を顕在化させることとなったと言えるだろう。
(筆者撮影 ブランチ大津京内のまちづくりスポット大津)
コロナ後の孤独・孤立の増大に対して、2021年2月に国も孤独・ 孤立対策担当大臣が司令塔となり、内閣官房に孤独・孤立対策担当室を立ち上げ、政府一丸となって孤独・孤立対策に取り組むこととなった。
政府の孤独・孤立対策を見ると、各省庁が予算をとって対応しているものの、まだまだ遠いう印象は拭えない。
孤独・孤立対策には、孤独・孤立に陥っている人を直接支援する活動が中心に行われていて、こうした対策ほど、地域密着で行われる必要がある。国の対応は、どうしても大きな単位で動かそうするため、小さな活動へ手が届きにくい。
(筆者撮影 ブランチ大津京の芝生広場)
孤独・孤立への予防的な対応も必要となる。人と人とのつながりを重視して活動する NPOが、小規模であっても多様かつ身近に存在することが重要で、直接孤独・孤立を対象とするものではない、例えば芸術、文化、スポーツ等の地域の市民活動に参加することで、他者とつながり、居場所となり、困ったときに相談できる関係性を築くこともできる。福祉サービス等の提供者としてだけでなく、その存在そのものが孤立・孤独の解消に貢献することができるという視点に立ち、こうしたNPOの層がより分厚くなっていくための環境整備が必要である。
今年5月31日に成立した「孤独・孤立対策推進法」が2024年4月1日から施行される。あわせて、所管が内閣官房から内閣府に移管されることになっているので、今後の政府の孤独・孤立対策にも注視したい。
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