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執筆者の写真代表 しがNPOセンター

パレスチナとウクライナ

  しがNPOセンター                      

                代表理事 阿部 圭宏


 



 パレスチナ情報について、これまであまり報道されることがなかった。パレスチナ自治区ガザ地区が「天井のない監獄」と呼ばれていることを初めて知った人も多いだろう。1993年にイスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)の間で結ばれたオスロ合意に基づいて、翌年ガザ地区は、ヨルダン川西岸地区とともにパレスチナ自治区になったが、ハマスが実効支配するようになった2007年以来、ガザはイスラエルに軍事封鎖されている。2008年以降は、ほぼ2年おきにイスラエル軍の激しい爆撃を受け、多くの市民が犠牲になってきた。


 220万の人口の多くが難民で、45パーセントが子どもだという。イスラエス側とは高い壁で区切られ、海上も封鎖されているため、これまでから人や物資の出入りが厳しく制限されてきた。こうした状況の中でのハマスによる大規模攻撃があった。


 ハマスの攻撃は決してあってはならないことで、一般市民への見境ない攻撃は許されるものではないことは言うまでもない。


 こうした中で、国連のグテーレス事務総長の発言は注目に値する。事務総長は、安全保障理事会で「どんな武力紛争でも民間人の保護が最重要だ」と強調し、イスラエルやハマスを名指しをしないものの、民間人を人間の盾として使うことや、100万人以上の人々に対して避難所も食料も水も医薬品も燃料もない南部に避難するよう命じ、その上で南部を爆撃し続けることを民間人の保護に反すると、非難した。


 さらに、事務総長がハマスによるイスラエルへの攻撃を「何もない状況で急に起こったわけではない」と主張したことは画期的だった。パレスチナの人々は56年間、占領下に置かれてきた。自分たちの土地を入植で失い、暴力に苦しみ、経済は抑圧されてきた。家を追われ、破壊されてきた。そうした苦境を政治的に解決することへの希望は消えつつある。だからといって、ハマスによる襲撃が正当化されるわけではない。また、襲撃を受けたからといて、パレスチナの人々に対する集団的懲罰が正当化されるわけではない、とした。



(筆者撮影 自宅畑の菜っ葉)


 これに対し、イスラエル国連大使は、事務総長はテロリズムを正当化している、ハマスの大量殺戮に理解を示した、などと猛反発し、事務総長に即時辞任を求めた。


 暴力の応酬はとどまるところを知らないが、圧倒的な軍事力を誇るイスラエルの攻撃が容赦ない。ガザへの地上侵攻はすでに始まっている。世界からの多くの批判や非難に対し、一気に地上部隊を派兵するのではなく、空爆を繰り返しながら徐々に進められているようにも見えるが、このまま行けば、ジェノサイド(民族浄化)につながりかねない。これはユダヤ人がナチスによるホロコーストへの意趣返しとなってしまいかねなくなり、国際社会からの反発はまだまだ大きくなるだろう。


 この暴力の連鎖をどのように止めることができるのか。国連が大国の拒否権によって機能しにくくなっていて、アメリカやロシアが提出した安全保障理事会の決議案はいずれも否決されている。


 一方、国連総会では27日、人道的休戦を求める決議案が圧倒的多数で可決された。アメリカとイスラエルが反対、日本は棄権した。なぜ、棄権するのか。暴力を止めるためには、独自の仲裁外交を目指すべきであろう。一方的にアメリカ追随の外交姿勢を貫くことは、そのうち大きなしっぺ返しにあうのではないだろうか。



(筆者撮影 桜紅葉)


 

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