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執筆者の写真代表 しがNPOセンター

ザル法と言われていた政治資金規正法の底が抜けた!

  しがNPOセンター                      

                代表理事 阿部 圭宏


                     ※今回のコラムは長めです


 昨年11月にマスコミで大々的に取り上げられた自民党派閥による政治資金パーティ収入の裏金問題は、東京地検特捜部による捜査の結果、3人の現職議員の逮捕や起訴、あとは派閥の会計責任者が起訴されたことなどで終わってしまい、多くの国民の期待を裏切るような結果となった。国会では、衆参の政治倫理審査会に多くの自民党議員が出席を拒否し、出席した10人もほとんどまともな説明をしなかった。自民党の処分も目を疑うばかりの緩さだった。


 そもそも政治資金規正法は形式を問うだけのものなので、政治家本人を政治資金規正法違反で立件するのはハードルが高いと言われている。そこがこの法律の抱える大きな問題なのだ。例えば、今回、安倍派、二階派、岸田派で立件されたのは会計責任者で、連座制がないために、政治家本人が不正を指示した等の関与が立証できなかったことで立件されなかった。また、支出への規制がないため、政治活動とは本来関係ない飲食や不正蓄財などもまかり通ってしまう。


 政治資金規正法は、「政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」のものなので、その目的に照らした改正が行われるべきだ。


 細川内閣の政治資金規正法改正は、政治改革の一環で行われた。そのときの議論では、中選挙区制では多額の政治資金が使われるため、選挙制度改革と政党交付金の導入と合わせ、企業・団体の政治献金を禁止しようとするものだった。中でも問題だった企業・団体の政治献金の取り扱いでは、個人向け政治献金は廃止されたものの、政党等への献金は残存した。これが20年以上経った今も残り続けており、腐敗の温床としての政治資金パーティが公然と行われている。


(筆者撮影 青紫蘇の苗)


 自民党の不祥事が今回の政治資金規正法改正のきっかけだったが、当事者たる自民党が衆議院に提出した改正案はとんでもないものであるにも関わらず、公明と維新の賛成を得て可決し、参議院に送られて会期末の6月19日に成立した。


 成立した改正法では、政治資金パーティ券の購入者公開基準を、「20万円超」から「5万円超」へ引き下げ、国会議員に自身の政治団体の収支報告書を確認する義務を負わせた上で、確認を怠って不記載や虚偽記載があった場合には処罰され公民権停止となる条項を盛り込んだ。例えば、当初の自民党案では公開基準を10万円としていたが、公明党の要求で5万円とした。基準を下げることでパーティ券が売りにくいという話が出ていたが、瑣末な話であって、抜け道はいくらでもある。すべての収入支出を明確にすることが政治の透明性である。収支報告の確認義務についても義務さえ果たしていれば、虚偽記載があった場合でも国会議員は処罰されない可能性があり、しっかりとした連座性が求められる所以である。


 さらに、政党から議員に支出され、使途公開の義務がない政策活動費は、これまでグレー扱いであったが、法律に書き込まれ正当化されてしまった。自民党と維新だけが存続を主張し、支出の項目別金額と「年月」を報告させ、上限額を決めた上で10年後に使途を領収書等により公開するとし、第三者機関のチェックを義務付けたものの、附則に書き込まれただけで、具体的な内容は決まっていない。


 政治資金の収支は透明化するのは当たり前だし、少しでも金のかからないような政治を目指すように政治家だけでなく、我々市民も努力していくべきだ。今回のトンデモ改正をこのまま許してはならない。





(筆者撮影 ヤマボウシの花)


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余録

 今回の一連の国会審議を見た感想。

 自民党の反省はしない厚顔無恥な態度とどうしても不明朗な政治資金を確保したいという露骨な要求であることがよく分かった。一方、維新のバカさ加減も見えた。


 政治資金規正法の実質的な法案提出者の鈴木馨祐は、財務省出身の元官僚。野党側も元官僚である議員は法案の一字一句までしっかり読み込み質問する。その中で、法案の中身の抜け穴、先送りなどが明らかにされたが、鈴木は鋭い野党のツッコミに言葉にはつまっても、言質をとられるような答弁をしない。今回の自民党にとっては一番の功労者だ。


 維新の対応は本当にひどかった。これまでは野党仕草をしつつ、最後に自民党側に付くというのが維新らしさだった。今回の衆議院の国対では、野党と歩調を合わせ、自民党案を蹴散らかしていたはずなのに、いきなりの岸田馬場のトップ会談での合意文書が出され、衆議院で維新が賛成に回ることになった。維新国対の動きを無視した形での代表の動き。それでも他の野党から改正案の抜け道を指摘され、慌てて修正協議するなどのバタバタ。維新には法案をしっかり読める議員がいないのかと他党の議員も思ったはずだ。


 参議院での維新の対応もひどかった。旧文通費(現在は「調査研究広報滞在費」)の改正を自民党に丸呑みさせたはずなのに、日程不足でできないということから、馬場が「うそつき」発言をして、挙げ句の果て、参議院では反対に回るという失態。しかも、いつもは散々バカにしていた内閣不信任案にも賛成に回っている。旧文通費は「歳費法」の改正を行うものなので、そもそも会期末になってからでは無理と思うのが普通である。


 維新の無能さ、ガバナンスのなさが問われている中で、吉村からも総括を求められ、党内向け説明会では、執行部への批判が多く出され、維新も結局、政策活動費を廃止すると言ってしまった。


 身を切る改革しか言わず、今回の国会対応で見えた公党としての未熟さを露呈した維新はこれからどこへ行くのだろう。




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