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執筆者の写真代表 しがNPOセンター

貧困と孤独・孤立は自己責任か

  しがNPOセンター                      

                代表理事 阿部 圭宏




                    

 東京都知事選のときに話題となった都庁前での無料食料配布は、とてもインパクトのあるニュースだった。認定NPО法人自立生活サポートセンター・もやいと新宿ごはんプラス(ホームレス状態や生活困窮状態にある人びとを支えるために、都内の各団体・個人が連携し、路上の視点から貧困問題を解決することを目指して結成)が毎週土曜日に、無料相談とあわせて食料品配布を実施している。2024年7月20日の配布実績は778人、相談利用は38人となっており、ずっと高止まりの状況が続いている。低所得者や職を失った人など、この国の生活困窮の縮図のような感じだ。


 もう一つ、ショッキングなニュースが流れた。産経新聞が7月21日配信した「広がる若者の孤独死 3年間に東京23区で742人確認、発見に死後4日以上が4割超」 ⋆1 というものだ。孤独死というと高齢者と考えがちだが、この数字を見て、若者にも孤独死のリスクが広がっているのだと実感させられる。若者の孤独死が直ちに若者の貧困ということではないが、この中には貧困を理由とした死亡も一定数いるものと思われる。


(筆者撮影 街路樹)


 厚生労働省が3年ごとに実施している国民生活基礎調査では、相対的貧困率が明らかになっている。2018年には15.7%だったものが2021年には15.4%と0.3ポイント改善したが、アメリカ、韓国に抜かれてしまっていて、この国の相対的貧困率が先進国で最悪となっている。


 日本は豊かな国と思っていたのは幻想だった。一億総中流と言われていた時代は、もはやはるか昔のこととなり、貧富の差が広がり、日々の生活がままならない人が増えている。生存権を脅かされている中で、政府行政は生存権を保障するために、率先して施策を講ずるべきだ。冒頭の食料品の無料配布や全国的に広がっているフードバンク、子ども食堂などの取り組みも、本来、行政が対応して然るべきもので、NPOをはじめとする民間がその肩代わりをしている。しかし、こうした善意の活動をしているNPOに対する誹謗中傷がネットで溢れかえっている。ありもしない難癖をつけてひたすら攻撃しまくる。2000年代に日本社会に蔓延ってきた自己責任論が大きな影響を与えているような気がする。



(筆者撮影 前栽の緑)


 このまま行けば、人権意識の低さ、多様性を認めたがらないことなどとあわせ、ますます日本を取り巻く状況は悪くなっていく。自己責任論は、まだまだ日本社会に根深く残っているので、格差社会はこれまで以上に進むことも懸念される。また、自民党政権が率先して使ってきた自助・共助・公助という図式では、自助と共助ばかりが強調され、公助が行われないという最悪の状況がこのままでは続いてしまう。


 貧困の現状をしっかり見て、こうした社会の矛盾に対し、もっと声をあげる必要があるだろう。人に優しい政治を取り戻すことが、格差社会へのアンチテーゼとなる。








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