貧しくなっていくこの国をどうしていくのか〜米問題から考える〜
- 代表 しがNPOセンター
- 6月1日
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しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏

失われた30年という言葉も最近では聞かなくなった。バブルが崩壊し、失われた10年ということが言われたが、それが20年になり、ついには30年となってしまったのだ。アベノミクスによる円安誘導は、この国の国際競争力を弱めてますます貧しくなっていく姿を実感せざるを得ない状況となっている。
円安によって輸出産業が生きながらえてきて、自動車産業を筆頭に活況を呈してきた。これまでの円高のときには、輸出企業が大変だったが、それが技術革新につながっていったとも言われている。円安という飴をしゃぶらされてきた企業はイノベーションという言葉を忘れてしまったかのようにも思える。日産やパナソニックの大量人員削減でも分かるように、日本の企業はこのまま持つのかということが気になるし、これは他の企業にも及んでいき、ますます負の連鎖は続いていくだろう。

(多賀さとの宿 一圓屋敷/筆者撮影)
円安影響は物価高にも顕著に表れている。物価の変動を示す4月の全国消費者物価指数は、昨年4月と比較して3.5%上昇したと総務省が発表した。ガソリン価格、光熱費の上昇にとどまらず、最近ではもっぱら米高騰や米不足が報道を賑わせている。
米不足が言われ出したのは昨年8月頃からだ。猛暑の影響による品質低下やインバウンド消費の増加、生産調整による減少などが原因として報じられてきたが、新米が出回る9月には解消するだろうという見通しだった。しかし、現実は新米が出ても、米不足は続き、価格上昇は止まらず、備蓄米放出後も一向に問題は解決していない。挙げ句の果て、農林水産大臣の交代にまで至ってしまうという事態になり、果たしてどうすれば安値での安定供給ができるのは分からない。

(多賀さとの宿 一圓屋敷 庭園/筆者撮影)
この国の農業政策は貧困だ。今回の米騒動以降も農家は減り続けており、従事者の平均年齢も上がり続け危機的な状況だ。生産者が減っていることで供給量が足りないということは容易に想像できるが、米問題の根本原因は米の消費が60年前と比較すると半分以下に減少し続けていることだ。この間減反政策が進められ、現在でも米の消費量が減少し続けているため、農家は転作を余儀なくされている。

(多賀さとの宿 一圓屋敷 金屏風/筆者撮影)
こうした悪循環が続く限り、米問題は解消されないだろう。温暖化の影響も大きく、品質のよい米が大量に供給されなくなる危険性がますます高まる。こうした中、トランプ関税が追い打ちをかけて、アメリカから米を買おうとする動きもあるが、日本の農業を潰す動きにしか見えない。
朝日新聞に「お金がなくて、一日中何も食べないことがあった、十分な食べ物が買えずに体重が減ったことがあった――。過去1年間でこんな経験をしたことがある人が日本の5人に2人以上いる」という記事が掲載された。 米が過剰に生産されたら、政府が無料で配ってもよいので、今こそ希望ある農業へと農政を進めるべきではないのか。
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