しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、世界的規模での社会への影響が計り知れないこととなっている。その中で特に影響が大きいのが日本だと言えるかもしれない。原油価格の高騰によるガソリンなどの価格上昇、電気代・ガス代の値上げ、輸入品の価格高騰が続いてきた。それに加え、円安の流れが止まらない。
こうした状況に岸田政権は、輸入小麦政府売渡価格の据え置き、ガソリン価格抑制の補助を行うとともに、電気料金の値上げに伴う激変緩和策にも取り組むと表明している。アベノミクス時には、異常なほどの金融緩和を続けてきたにも関わらず、目標としていたインフレ2パーセント達成はできなかったが、皮肉にも今はいとも簡単に達成してしまった。それでも賃金は上がらず、物価だけが上がって市民生活には大きな影響が出ている。
(龍谷大学 瀬田キャンパスにて 筆者撮影)
円安に対しては、政府・日銀が10月21日、24日の2営業日連続で、あわせて6兆円を超える為替介入をした可能性があると報じられている。介入は投機筋への対抗と言われているが、その効果は一時的で、日米の金利差が大きい限り、もっと円安に触れる可能性もある。
日本政府がとっている経済政策を見る限り、誰も高揚感を持たないし、諦めしかないような気もする。賃金も上がらず、貧富の差が広がり、社会がうまく回っていないという状況は今のままでは改善されない。本当に暗たんたる気持ちになる。エネルギー、食糧の多くを海外に頼り、金に物言わせて買ってくれば社会や経済は回るというこれまでの仕組みでは、もはや取り残されるしかない。たとえ状況が改善されたとして、それは問題を先送りしているにしかすぎない。かつて、家電エコポイントで息を吹き返した家電メーカーが、その後、衰退の道を辿ったのと同じようになるではないかと思ってしまう。
(龍谷大学 瀬田キャンパスにて 筆者撮影)
エネルギー政策では、岸田政権は原発回帰を目指しているが、これでは持続可能性はない。今からでも、再生可能エネルギーに舵を切り、ここへ政府も民間も資金を集中することが必要だ。新しい方向に舵を切るのは並大抵ではないが、それでもエネルギー政策の転換はできるのではないか。
もう一つの食料問題は深刻である。カロリーベースの食料自給率38%では、輸入がストップした場合、国民は飢え死にしてしまう。例えば、農業従事者の平均年齢は67,9歳(2021年)、少し前の数字になるが耕作放棄地は42.3万ヘクタール(2015年)とほぼ滋賀県の面積に匹敵するほどである。畜産に関しては、飼料を輸入に依存している割合が高く、輸入価格が高騰すればたちまち国内の畜産業は行き詰まってしまう。農業や畜産業をどのようにしていくかは一朝一夕でできるものはないので、中長期的なビジョンをしっかりと立てることが大切だ。
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