しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
昨年度、10年ぶりに滋賀県の委託事業を受けた。子ども青少年局(現「子ども若者部」)
が「協働で進める子ども・若者まんなか活動助成事業費補助金」を実施するに当たり、採択団体の伴奏支援等を行う業務に関する委託事業で、公開プロポーザルで採択されたものだ。「協働で進める」と書いているものの、県のNPOに対する姿勢はとても協働からはほど遠く、これまで県とNPOとで進めてきた協働の根幹が揺らいでいる。
(筆者撮影 サツキ)
今回の事業は本来協働事業として位置付けをして進めるべきものであるが、県は入札制度の延長線上にある「公開プロポーザル」という仕組みの中で行った。NPO側は協働と思っていても、行政はNPOを単なる事業を請け負う業者という見方しかせず、契約書にも行政優位の文言が並ぶ。これまで協働の中で確認しあってきた目的共有、対等性、信頼関係確保、役割分担・責任の明確化、透明性の確保など、どれ一つもできていない本当にひどい対応をされた。
滋賀県はNPO法施行以来、熱心に協働に取り組んできた自治体である。職員やNPO有志、有識者で作成した「しが協働モデル研究会報告」(2005年3月公表)が協働推進の当初のガイドラインとなり、協働研修、協働提案制度が進められた。2016年3月に策定された「滋賀県協働推進ガイドライン」に基づき、協働ラウンドテーブルなども行われてきたが、最近では特に目立った協働推進の動きはない。
これまでのこのコラムで協働について何度か取り上げてきた。
「協働型社会の創造に向けて」(2019年1月)
「市民活動・NPOを社会へ根付かすには」(2024年4月)
を読んでもらえば、いかに地域に根付いたNPOが複数存在することが大切かをわかってもらえると思う。
(筆者撮影 新緑)
最近特に感じるのが、行政が協働の本質を忘れ、市民と一緒に地域づくりを行おうとしないことである。営利も非営利も関係なく、同じ土俵に乗せて競わされる。これまで地域のNPOが担ってきた事業や指定管理業務が全国チェーンの企業に切り替えられいく。企業のプレゼンテーションの見せ方、コスト削減策などで来られたら、NPOはひとたまりもない。地域の大事な財産が吸い取られてしまうということに行政も気づく必要がある。もう一度協働の原点に立ち帰り、同じ土俵での話し合いが行われるよう、積極的に自治体に働きかけることが必要だ。
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