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公職選挙法から見える選挙

執筆者の写真: 代表 しがNPOセンター代表 しがNPOセンター

  しがNPOセンター                      

                代表理事 阿部 圭宏



 10月から11月にかけて、衆議院総選挙、兵庫県知事選挙、名古屋市長選挙と大きな選挙が続いた。普段はあまり注目されない自治体首長選挙であるにも関わらず、兵庫県知事選挙は、異例の関心の高さだった。ネット選挙だという言説がテレビ、新聞等で蔓延っているが、そもそもネットとか言う前に、県議会全会一致での不信任決議による失職出直し選挙だったという点を踏まえておく必要があるだろう。選挙後は再選された知事が百条委員会をはじめ県議会とどう向き合っていくのかとか、県職員はどうするのだろうとかが話題になるだろうと予測していた。勝てば官軍のごとく、嫌な流れとなって不信任を突きつけた議会への風当たりが強くなっていく様相を見せたときに、いきなり出てきたのがPR会社による選挙違反に関する報道等だ。


 ことの真相はこれから明らかになるだろうが、筆者が気になっているのは公職選挙法という法律の建て付けだ。

  

(筆者撮影 紅葉)


 公職選挙法は1950年に制定されたものである。戦前の反民主的な選挙制度を民主的なものにしようとするものであったが、欧米では違反となる事項を個別に列挙することが一般的であるのに対し、日本は特殊な仕組みとなっている。公職選挙法は戦前の仕組みを踏襲し、選挙運動そのものを全面的に禁止し、合法なものを個別具体的に列挙するという欧米とは真逆の仕組みなのだ。包括的禁止・限定解除方式だと言われている。


 実際に選挙に関わった人によると、マニュアルや先例に倣って、これはやって良いのか悪いのかを吟味しながら進めるとのことだ。政治活動と選挙運動が区別されていて、選挙運動は選挙ごとに決められた運動期間中しかできない。個別訪問、署名運動、飲食物の提供、買収などが禁止されているし、できることもきっちり決まっている。例えば、拡声器付き選挙用自動車は1台で、乗車できる運動員は4人以内である。ことほど左様に、ポスター掲示、選挙ハガキ、街頭演説、運動員数、電話利用、ネット選挙運動などが細かく決められている。


 (筆者撮影 紅葉かつ散る)


 警察庁は11月27日に先の衆議院総選挙の公選法違反の取り締まり状況を公表した。摘発は72件で計60人で、うち逮捕者は12人だった。そのうち、買収は30件で3人が逮捕された。投票所などでの投票干渉が15件と続いていて、警告は864件だった。インターネットを利用した選挙違反は、警告が8件だった。


 公選法違反の中でも特に厳しいのが「買収」であると言われている。候補者にとって不公平が生じないように、選挙で使える金の制限、運動員数の制限、ポスター・選挙カーなどの公費負担もある。選挙運動員は無償で行うのが基本である。


 選挙運動を知らない人からすれば、運動員は無償なのだという驚きがあるかもしれないが、運動員をアルバイトで雇ったり、対価を払う約束をすれば運動員買収となり、連座制もあって政治家には非常に重い罪となる。


 今回の現知事の代理弁護士もPR会社社長のポスター制作に関わらない部分は「社長個人のボランティア」だと言っている。この話が通用するのかどうか、今後どのような展開を見せるのかは分からないが注目しておこう。

 


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